裸のバニー(4) 無毛の股間

 女体に巻きつけられた一枚のバスタオル。柔肌と布の間に、押し込む形で止められた布の端を、指先でそっと抜き取る。綾乃の体がビクンと反応した。視線は、彼女自身のひざに落としたままだ。表情の真剣さに気おされ、こちらも次第に緊張してくる。
 
 もう片方の手でも、バスタオルを握った。そして、両手をゆっくりと斜め下に引く。バニーのコスにしては、やけに背中が大きく開いたデザインだな。そう訝りつつ、カーテンを左右に開くように、綾乃の背中をあらわにしてゆく。
 
 陶磁器を思わせる、きめの細かい肌。背骨の凹凸は、腰の辺りで平らになった。そして、再び現れたくぼみは、左右に盛り上がった肉丘のあわいに、深いスリットとなって吸い込まれてゆく。それが尻の割れ目だと気づいた私は、あわててバスタオルを閉じようとした。
 
「いいの」
 綾乃の低い囁き声。裸だった。彼女は、バニーガールのコスチュームなど、身に付けていない。それが何を意味するか、いかに鈍くて臆病な私でもわかった。煮え切らない私の態度を、綾乃は見ていられなかったのだろう。
 
 気がつくと、彼女の体全体が小刻みに震えている。緊張からか、あるいは怖れによるのだろうか。その健気な姿を目にして、それまで押さえつけていた情欲が一気に弾けた。
「綾乃……」
 激情に駆られた私は、彼女の名を呼ぶと、その体を後ろから抱きすくめた。そのまま頬を寄せ、唇を求める。

 綾乃はそのままの姿勢で、バスタオルを両手で胸に押しつけていた。その体はガチガチに強張っている。彼女の緊張を和らげるべく、バスタオルの中の乳房を探る。やや小ぶりな胸のふくらみ、その頂に息づく乳首は、既にしっかりと頭をもたげていた。彼女も興奮している。そう思うと、少し気が楽になった。
 
 コスプレ撮影は、あくまでも口実だ。しかし、そこから抜け出せずにいる私を見て、バニー用のレオタードを身につけず、バスタオルの下は全裸という格好で、脱衣場から出てきた彼女。その心意気に背中を押されるように、私も一線を越える腹を括れた。
 
 初めて目にする恋人の裸体、その肌触りの滑らかさ、匂い立つ女の香りに、私は酔いしれていた。舌で掬い取った唾液は、まさしく甘露の味わいだ。そのすべてを、彼女の旦那は夜ごと貪っているのだろう。それを考えると、血液が逆流するような怒りを覚える。
 
「この唇も、この胸も、みんな旦那が女にしたんだな」
 低く押し殺した声で、そう呟く。自分の言葉で、心にヤスリ掛けをしているような感覚だ。たまらなく不快なのに、思考を抑えつけることが出来ない。唇に再び吸い付きつつ、その先を考えた。
 
 もちろん綾乃の女性器は、何百回、何千回となく旦那に貫かれている。無論、私は彼女の肉体だけを愛しているのではない。だが、自分だけの「初めて」が欲しくてたまらない。男の愚かしさであり、感傷に過ぎないとわかっているものの、その想いは狂おしく脳内を駆け巡っている。
 
 綾乃は、夫がまったく興味を示さない場所が、たった一つだけある。そう言っていた。それは、セックスのための器官ではない。受け入れるためではなく、排出するために存在する穴。つまり肛門だ。そこだけは、この私が女にしてやる。
 
 ただ、いきなりアナルを犯して、綾乃の体を傷つける愚は冒したくない。私は、彼女を憎んでいる訳ではない。深く愛している。そして、今後も愛し続けたいがために、自分だけの印を刻みたいのだ。目に見える場所にでなく、女体の奥、そして心の奥底に。
 
 彼女の口から離した唇を、肩口から背骨に沿って軽く押し付けてゆく。キスマークを付けることは許されない。募る悔しさを、呼吸を深くして鎮める。すべてはこれからだ。背中を伝い降り、くびれた腰にキスをする頃には、私はいくらか落ち着きを取り戻していた。
 
 ただ、それは海面が凪いでいるように見えるだけ。私の心の底では、黒々とした嫉妬と怒りが、尚も荒れ狂っていた。それらは互いに激しくぶつかり合い、羞恥を煽る言葉責めで、海に投げ出された犠牲者を揉みくちゃにしようとする筈だ。綾乃という名の、美しき生贄を。
 
 ★
 
 綾乃は、相変わらず頬を染めてうつむいたままだ。横顔に宿る表情をじっくりと観察してから、形よく割れた尻肉のあわいに、尖らせた舌を丹念に這わせてゆく。
 
 二つのふくらみが寄り添う、肉と肉の隙間。そこを下へとたどれば、肌の色が次第に濃さを増してゆくのがわかる。その色合いの変化すら、綾乃は実に女らしい。押しつけた唇を軽くこすりつつ、舌先を少しずつ下へとずらせる。
 
 綾乃の肌の匂いは、成熟した女性の艶をたたえつつ、どこか少女の可憐さを宿していた。奥に分け入った舌の向こうに、可愛いアナルが見える。愛する女性の秘門だ。いきなり触れたりはしない。花弁を硬く閉じた蕾の周囲を、円を描くように舐めてやる。軽く背中を押して、上半身を心持ち前に傾けさせた。
 
 細い腕が伸びて、体を支える。床にはカーペットが敷いてある。上半身に引っ張られるように腰が持ち上がり、床に押しつけられていた尻肉が浮いた。アヌスがはっきりと姿を見せる。そして、口を閉ざした鈍色の陰唇も、かすかに顔を覗かせている。
 
 片方の手の指を背骨のくぼみ沿いに、もう片方を腰のくびれから前に回して、太ももと下腹の境目を前にたどる。陰毛のシャリシャリとした感覚が、指先を刺激した。綾乃はひざを前に伸ばし、お姉さん座りをしている。その裸身に、何ひとつまとわずに。いや、ただひとつ、コスプレの名残である白いうさ耳をつけていた。
 
 カーテンを通り抜けてきた薄明かりが、綾乃のたおやかな体を、なかば影絵のように見せている。右手の指先で程よく膨らんだ恥丘をなぞりつつ、舌の描く円を少しずつ狭めてゆくと、その動きに応じるように、菊ひだがきゅっと反応するのが可愛らしい。
 
 綾乃は、恥毛を自分で剃っている。完全なパイパンではないが、肛門と女陰の周辺は無毛だ。恥丘に小さく、黒い逆三角形が残っているだけ。私は体の前に回した手で、ぴったりと閉じられていた両方の太ももを、左右に軽く割り開いた。と同時に、もう少し前に手をつくように促す。綾乃の尻が更に持ち上がった。
 
 慎ましく唇を寄せ合っているヴァギナ。この女は、こんなところまで美しい。その清楚なたたずまいに見とれつつ、たっぷりと唾液を含んだ舌の腹で、会陰部を舐め上げる。綾乃の喉の奥から、押し殺した声がもれた。アナルと女性器の周辺を八の字を描いて、丹念に舌を這わせる。
 
 弱くゆっくりと、そして時に強く。きわどい辺りまでは近づくものの、直前で引き返す舌の動き。それを繰り返されるうちに、綾乃は手を更に前に伸ばした。豊かな美尻が持ち上がり、彼女は四つんばいになった。しなやかな背中から、肩への曲線がとても美しい。
 
 両方のひざを離れた位置についているため、股間は尻の側からしっかりと覗ける。部屋の中は仄暗く、窓に頭を向けた姿勢だ。肉ひだまでは無理だが、妖しいその形がくっきり見えている。綾乃が最も女である部分、かすかなその香りを楽しみながら、私は後ろの蕾に唇を近づけた。

 
 裸のバニー(5)に続きます……
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